<その心は>
漠然と、思っていた
こいつに選ぶ権利など無いのだと
死にかけてるのを拾ってやって
仕事を与えてやって
住む所まで与えてやった
だから、
こいつに選ぶ権利などなく、
ただ、アタシの手足として
ずっと…
だが、次で100支店目の事務所が出来るという時
あいつの口から出た言葉…
(俺のユメはなぁ)
(早くドクリツして)
(カネモチになって)
(ああいうオンナを)
(ゲボクにする事なんだよぉ)
……
苛々する…
仮にあいつが、あのいけ好かない奴等を
挑発する為に言った、と言い訳したとしても
…苛々、する…
「…部品ごときが…」
「…アタシのした命令以外…」
「…資格があるとでも…」
なんでもするって…?
じゃあ、命を投げ打てるか…?
アタシの為に…
(し、しかし…)
無理だというのか…
お前はその為に
アタシの側に居るんじゃないのかぃ…
(若!!)
…癇に触る、ねぃ…
その心配そうに駆け寄る様子も
アタシの身体を支える腕すらも…
なにもかもが、癇に触る
家に着くまでの、お前はいつもどおり…
着いてからのお前もいつもどおり…
所詮アタシが苛々したって、
態度に出さなければ、お前には分からないし
お前が何を思ったって、
口にさえ出さなけりゃ
アタシには分からないことなのだ
地位が欲しいか
女が欲しいか
金が欲しいか
自由が欲しいのか
それがお前の
夢、か…?
自由を望むのか
アタシの下僕にしてやったのに
癇に触る…
アタシの言うことだけ
聞いていれば良いのだ
出て行きたいだなんて
許さない…
出て行きたい、と
いつか
言ったりするのだろうか…
「…一生…」
「アタシの為に…」
(はい…、五嶺様…!!)
人は変わる
そんな事は知っているのに…
あいつは大丈夫だなんて
なんで思ったりしたんだろう…
なんで、こんなに長く
側に置いたりしたんだろう…
そもそも…
アタシに仕える者が
同業者相手に…
早く独立したい、と洩らすだなんて
おいそれと許せる事ではないんだよ
知っててやっているのか
クビになりたいのか?
…まさか!
あれは馬鹿だ…
チャンスをくれと言いながら
与えられたチャンスにひるみ、
挙句は失敗する…
あれは…、馬鹿で…どうしようもない
……
本当に出て行きたいのだろうか…?
「……、煩わしい…」
…あいつを拾ってから何年たった?
なぜ、こんなに長く
側に置いたりしたんだろう…
人の気持ちなんて変わるんだ…
どうにか、
しなくては、
出て行きたいと、
言われるなんて、事…
絶対に、許せるはずなど無い
そんな日が来るんだったらね…
今、ここで、アタシが捨ててやるよ…
−−結−−
2006.10.22
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