<ドブの中から>
ひどく生臭い、
ドブの中から
ひどく綺麗な、
空が見えていた
醜くて美しい世界
その世界の
すべてのものから、
捨てられた気がしていた
生まれて、
捨てられて、
疎まれて、
飛び出して…、
堕落して、
怨まれて、
奪われた
(生きる、気力も)
親も
愛も
夢も
無かった
どうして、おれを…
生んだんだよ
どうして、おれを
迎え入れたんだよ、この世界は…
必死に生きてみた所で、邪魔にされて
あちこちにたらいまわしにされて
愛情なんて、
本で読んだことしかなくて
渇望していたけど、誰かに甘えるなんて
出来るはずもなかった
みんな自分の大切な事で手一杯なんだから…
子供が、ドブに落ちていても、
滑稽なほど、誰も気づかない…
もしくは、俺はもう
世界の中に
いないのかもしれない…
………、
……
(…チャ…、パチャ…)
…なんの、音だろう…
(パチャッ…)
…水の、音?
(おい、)
…声…、
…誰の……?
そうして、俺は
文字通り本当に
拾われた。
世界から、
取り残され、
忘れられかけていた俺を
世界に引き戻した
あのドブから、連れ出してくれた
(おまえを、使ってやる)と
笑った顔は
泣きたくなるほどに
泣きたく…なるほどに
−−結−−
2006.10.13
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